採用ペルソナを作る会社ほど採用がうまくいかない?
先日、「採用サイトの『求める人物像』が、現場のエースとズレている問題」というコラムを書きました。
社長が魅力だと思っていることと、社員が魅力だと思っていることは、意外と違う。
だからこそ、採用活動ではまず社員の声を聞くことが大切だ、というお話です。
実は、この話には、さらに深い続きがあります。
採用活動の打ち合わせをしていると、よく「まずは採用ペルソナを作りましょう」という提案が出ることがあります。
ペルソナとは、自社が採用したい人物像を、年齢から価値観、働き方の希望まで、具体的にシミュレーションして設定する手法です。
最近では採用のセオリーとして紹介されることも多く、実際に細かく作り込んでいる会社も増えています。
採用コンサルが入っている会社のあるあるではありますが。(笑)
ただ、私は現場でいつも思うのです。
「採用ペルソナを作れば作るほど、むしろ採用から遠ざかっている会社があるな」と。
もちろん、手法そのものが悪いわけではありません。 問題は、そのペルソナが「誰の頭の中から生まれているか」です。
多くの場合、経営者や採用担当者が会議室に集まって考えます。
「こんな人が来てくれたらいいな」 「こんな人なら、きっと活躍できる」
そうして出来上がるのは、だいたいこんな人物像です。
・素直で、前向きで、向上心がある
・コミュニケーション能力が高く、主体性もある
・チームワークを大切にできて、できれば若くて、長く働いてくれる
まるで求人広告の見本のような、完璧な「理想のプロ」が完成します。
しかし、そんな全知全能のヒーローのような人は、市場にそう滅多にいません。
結果として、自分たちでハードルを上げすぎてしまい、「誰も採用できない」という罠に陥ってしまうのです。
だから、私は打ち合わせのときに必ずこう聞きます。
「ちなみに今、御社の現場で一番活躍している社員さんって、どんな人ですか?」
すると、途端に社長や担当者の方のトーンが変わります。
「いやぁ、あいつはちょっと変わってますよ(笑)」
「普段は、ほとんど喋らないタイプですね」
「協調性があるかって言われると、うーん、微妙かも」
「でも、お客様からの信頼は、社内でダントツなんです」
そんなお返事が返ってくることが、本当に多いのです。
つまり、「会議室で描いた理想」と、「現実の現場を支えているエース」が、全く一致していないわけです。
ここで勘違いしてはいけないのは、「じゃあ、活躍しているその社員をそのまま採用ペルソナにすればいいんだな」という単純な話でもない、ということです。
※採用ペルソナとは、自社が採用したい「理想の人物像」を、年齢、学歴、職歴、価値観、ライフスタイルなどに至るまで具体的に設定した架空の人物モデルのこと
例えば、創業期から会社を支えてくれているベテラン社員がいたとします。
会社の歴史も、社長の苦労も知っている。お客様とも長年の信頼関係がある。だから活躍している。
でも、その人をそのまま求人票に落とし込んでも意味はありません。これから入社する人は、そのベテラン社員と同じ歴史を歩んできたわけではないからです。
私たちが本当に見るべきなのは、その人のスペック(年齢や経歴)ではありません。
「なぜ、その人がこの会社で活躍できているのか」という、背景にある根っこの部分です。
その人は、どんな価値観を大切にしているのか。
どんな仕事の向き合い方に、やりがいを感じているのか。
会社のどんなところに、居心地の良さを感じているのか。
そこにある、自社ならではの「共通点」を見つけ出すこと。それこそが、本当に必要な人を見極める基準になります。
私は、採用活動で本当に大切なのは、書類の上に綺麗なペルソナを描くことではないと思っています。
大切なのは、「うちの会社に合うのは、本当はどんな人なのか」という社内の認識を、しっかりと揃えることです。
社長が考える人物像。 管理職が求める人物像。 現場の社員が必要としている人物像。
ここがバラバラのままでは、どれだけ立派な採用サイトを作っても、どれだけ求人広告にお金をかけても、採用はうまくいきません。面接や、入社後の現場で、必ず「こんなはずじゃなかった」というズレが起きるからです。
採用とは、会社のあり方や考え方を、外に向けて正しく伝えていく活動です。
その基準が社内で揃っていないのに、社外の求職者に真っ直ぐ伝わるはずがありません。
ペルソナを作ることが目的ではありません。 自社に合う人材を、社内全体で正しく理解し揃えることが目的です。
そしてその答えは、会議室のホワイトボードの前ではなく、今まさに現場で汗を流してくれている、社員の「リアルな姿」の中にこそ隠れているのです。
FAQ
求める人物像は経営者だけで決めても良いのですか?
活躍している社員にはどのような共通点がありますか?
社長と社員で会社の魅力が違うのはなぜですか?
なぜ社員インタビューが採用活動に役立つのですか?
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール