「お互い様だから、いいよ」|広島の採用ホームページ制作会社が紐解く人材獲得の本質
「どうして、この園で27年も続けられたんですか?」
採用サイトをつくるため、ある保育園で先生方にお話を聞いていたときのことです。取材させていただいたのは、この園に勤めて27年目になるベテランの先生でした。
27年・・・、私はその数字を聞いた瞬間、思わずメモを取る手を止めてしまいました。
一つの職場で、27年間働き続ける。
言葉で言うのは簡単ですが、決して平坦な道のりではなかったはずです。
人間関係に悩んだ日もあったでしょう。
自分の保育に自信をなくした日や、ふと「辞めようか」と頭をよぎったことだって一度や二度はあったはずです。
それでも彼女は、27年間ずっとこの園で子どもたちと向き合ってきました。その理由を尋ねたときに返ってきたのが、ご自身が子育てに追われていた若かりし頃のエピソードでした。
子どもが小さかった頃、どうしても避けられないのが急な病気や発熱です。
朝起きたら子どもが熱を出している。
日中、急に保育園や学校から呼び出しの電話が入る。
予定していた仕事を誰かに頭を下げてお願いし、申し訳なさに押しつぶされそうな思いで早退しなければならない。
働きながら子育てを経験したことがある人なら、誰しも胸が締め付けられるようなあの焦りと罪悪感を覚えているはずです。
その先生も、若手だった当時は全く同じでした。けれど、子どものことで急に休まなければならなくなったとき、周りの先輩や同僚の先生たちは嫌な顔一つしなかったそうです。
「お互い様だから、いいよ。こっちは任せて早く行ってあげて」
笑顔でそう言って、自分の分の仕事までサッと引き受けてくれた。
「あのときの一言があったから、私はここでやってこれたんです」 そう語る先生の言葉を聞きながら、私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていました。
今では、どの会社のホームページや求人票を見ても、立派な採用情報が並んでいます。
「産休・育休取得率100%」「有給消化率アップ」「子育てと仕事の両立を徹底支援」
もちろん、制度を整えることは素晴らしいことですし、必要なことです。
けれど、35年間現場を取材してきた私は知っています。
「制度があること」と、「その制度を気兼ねなく使えること」は全く別物だということを。
どれだけ立派な規程があっても、休みを申し出るたびに「すみません」と何度も何度も頭を下げ、後ろめたさを感じなければならない職場もあります。
一方で、就業規則の細かい文字には書いていなくても、急な休みの連絡に「いいよ、現場は私たちが守っておくから安心して子どもについていてあげて」とごく当たり前に声を掛け合える職場もあります。
本当の意味で「働きやすい会社」とは、どちらなのか。答えは言うまでもありません。
そして、この取材にはさらに心に響く続きがありました。
あれから長い年月が経ち、彼女自身が園を支えるベテランになり、今度は若い先生たちを支える側になりました。当然、今度は若手の先生たちが、小さなお子さんの急な発熱でパニックになる番です。
そのとき、彼女はどうしているのか。
「昔、自分が先輩たちにしてもらったことを今度はこの子たちに返しているだけです。『私たちが後ろに控えているから、安心して子どもと向き合ってきなさい』って送り出しています」
彼女は照れくさそうに笑いました。私はこの話を聞いたとき鳥肌が立ちました。
「会社の文化」とは、まさにこうやって作られ、受け継がれていくものなのだと、確信したからです。
経営理念のテキストに書いたから文化になるわけではありません。社長が朝礼や会議で何百回叫んだから文化になるわけでもありません。
自分が誰かに助けてもらった優しさを、感謝とともに次の世代へ返す。助けられた後輩もまた、いつかベテランになったとき、新しい新人へその優しさを返す。
まさに「恩送り」「Pay Forward」。
その目に見えない「恩送りのバトン」が10年、20年、27年と途切れることなく繰り返されて初めて、それは誰にも真似できないその組織だけの「本物の文化」になるのです。
私は採用サイトをつくる仕事をしています。取材の際、「御社の福利厚生制度を教えてください」と質問することはいくらでもあります。
けれど、私が本当に聞き届けたいのは制度の名称や数字などではありません。
その制度を使ったとき、周りの社員はどんな表情をするのか。誰かが困って立ちすくんだとき、現場からどんな言葉が飛んでくるのか。新人が失敗して落ち込んだとき、先輩はどうやって肩を叩くのか。
そうした求人票の「福利厚生欄」には決して載らない何気ない日常のやり取りの中にこそ、その会社の本当の価値や働きやすさが隠れています。
だから私は、綺麗に整理された資料を読むだけでなく、現場へ足を運び、そこで働く人の生の声に耳を傾け続けるのです。
27年間働き続けてきた理由を尋ねたことで、私はまた一つ、宝物のような言葉に出会うことができました。
「お互い様だから、いいよ」
たった一言のどこにでもある言葉です。けれど、この温かい一言が人から人へ27年間大切に受け継がれてきたという事実。
「アットホームで働きやすい職場です」と何千文字使ってアピールするよりも、このたった一つのエピソードの方が、この保育園の誇りや温かさをずっと深くまっすぐに教えてくれます。
「うちには求職者に自慢できるような特別な制度なんてないよ」 そう謙遜する園長先生や社長さんに会うたび、私は心の中で静かに誓います。
大丈夫です。あなたの現場で交わされているその温かい一言の中にこそ、未来の仲間が喉から手が出るほど欲しがっている「本物の価値」がありますよ、と。
それを見つけ出し、伝わる言葉にして未来へ手渡していくこと。それこそが、35年間現場を歩み続けてきた、私の変わらない仕事です。
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FAQ
「なぜカンドウコーポレーションは取材を重視するのですか?」
「社長と社員で会社の魅力が違うのはなぜですか?」
「活躍している社員にはどのような共通点がありますか?」
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール