保育園に、管理栄養士はいらない。それでも3人いる|広島の採用ホームページ制作会社が紐解く人材獲得の本質
「保育園って、そもそも管理栄養士が必要なんですか?」
採用サイトをつくるため、ある保育園で管理栄養士さんを取材していたときのことです。
私は保育園の制度に詳しいわけではありません。病院や高齢者施設に管理栄養士さんがいることは知っていましたが、保育園にも絶対に置かなければいけないものなのか。そんな素朴な疑問からの質問でした。
すると、取材に応じでくれた先生から少し意外な答えが返ってきたのです。
「いえ、実は法律上、必須ではないんです」
聞けば、保育園での給食調理は必ずしも管理栄養士である必要はなく、配置義務もないのだそうです。
それなのに、この保育園には管理栄養士が3人も籍を置いています。
制度上はいなくてもいい存在が、なぜ3人もいるのか・・・?
話は数年前、理事長が「子どもの食生活と体の根っこを本気で育てたい」と考えたところから始まります。
ただご飯を作って食べさせるだけなら、管理栄養士でなくてもいい。それでも、成長期の子どもたちの「食」をもっと深く大切に考えたい。だから管理栄養士を採用した。取材でお会いした先生が、まさにその第一号でした。
そこから「子どもたちのために」と工夫を重ねるうちに一人増え、もう一人増え、気がつけば3人体制になっていたのです。
ここまでなら、「食育に力を入れている熱心な保育園なんだな」という話で終わるかもしれません。 けれど、取材を進めるうちに分かった取り組みは、そんなレベルではありませんでした。
子どもたちの「噛む力(咀嚼力)」を高めるために、食材の切り方や固さを考慮した献立をゼロから考案する。
週に一度、あえて歯ごたえのある「噛むおやつ」の日を作る。
口の周りの筋肉を鍛えて正しい発音や呼吸につなげるため、オリジナルの歌まで作ってしまう。
さらに驚いたのは、地元の大学と共同研究を立ち上げ、子どもたちの咀嚼力の変化を科学的な数値で検証していたことです。
「なんとなく良くなった気がする」という感覚値ではなく、本当に子どもの体にプラスになっているのかをデータで確かめる。 制度上はいらないはずの現場で、ここまで突き詰めてやるのかと、私はメモを取る手を止めて呆気にとられてしまいました。
けれど、私が一番膝を打ったのは、次の「お箸」にまつわるエピソードです。
「子どもたちに、正しい箸の持ち方を身につけてほしい」
食のプロである管理栄養士さんなら、当然そう願います。しかし、この保育園には「子ども主体」という大切な保育の理念がありました。
大人が上から「こう持ちなさい」「正しく使いなさい」と強制することは、園が最も大切にしている「子ども主体」の姿勢とは反してしまいます。
正しく使わせたい。でも、無理強いは絶対にやりたくない。管理栄養士さんは頭を悩ませました。そして、子どもの身体の発達を観察する中で、ある共通点に気づいたのです。
「鉛筆を正しく持つ指の力と、お箸を使うときの指の使い方は、全く同じだ」
だったら、無理にお箸を持たせる必要はない。子どもたちが大好きな「塗り絵」を思い切り楽しんでもらえばいい。
「箸の練習をしなさい」と指示することなく、子どもたちは遊びに夢中になりながら自然と手や指の筋肉を鍛えていく。その積み重ねが、やがて無理なくお箸を正しく扱える力へとつながっていくのです。
私はこの話を聞いたとき、鳥肌が立つほどの感動を覚えました。
そして同時に、「企業の理念」というものについて、深く考えさせられたのです。
私は35年間、仕事柄たくさんの会社の経営理念を見てきました。
「お客様第一」
「人間尊重」
「地域社会への貢献」
ホームページや社内用の額縁には立派な言葉が並んでいます。でも、私はいつも心のどこかで思ってしまうのです。
「・・・で、だから何?」と。
大切なのは、その立派な言葉ではありません。
その理念によって、現場で働く一人ひとりの判断がどう変わっているのか。
日常の小さな業務の中で「何をやって、何をやらないのか」。
壁にぶつかったとき、どっちの道を選ぶのか。
そこまで現場の思考に落ちてきて初めて、理念は「生きた価値」になるのだと思います。
この保育園の場合、「子ども主体」というフレーズは単なるパンフレットの飾り言葉ではありませんでした。現場の保育士さんだけでなく、給食室で包丁を握る管理栄養士さんが「お箸の教え方」に悩んだ瞬間にまで、その理念が血液のように脈打っていたのです。
「子ども主体なんだから、無理やりやらせるのは違うよね」「じゃあ、子どもが自分からやりたくなる方法はないかな?」
そうして知恵を絞り、たどり着いたのが「塗り絵」でした。
私は、こういう「生きた話」を聞きたくて、35年間現場へ足を運び続けているのだと思います。
「当園では子ども主体の保育を実践しています」
そんな綺麗なまとめ文章なら、誰にでも書けます。今の時代ならAIだって一秒で生成してくれるでしょう。
でも、 「お箸を持たせたい。でも子ども主体だから無理強いはしたくない。だから塗り絵から始めた」
この泥くさくも温かいエピソードは、現場へ行き、働く人の目を見て話を聞かなければ絶対に表に出てきません。そして、こうした何気ない日常の選択の中にこそ、どんな立派な理念の解説文よりも、その組織が本当に大切にしている「本物の誇り」が宿っているのだと思います。
採用サイトやホームページをつくるとき、「御社の理念は何ですか」と尋ねるだけでは全く足りないと私は思っています。
その理念が、現場で働く人たちの毎日の判断や悩みにどう表れているのか。そこまで聞き届けたいのです。
保育園に、管理栄養士はいらない。それでも3人いる。
そしてその3人はただ給食を作るだけでなく、「子ども主体とは何だろう」と日々知恵を絞りながら、目の前の子どもたちと向き合っている。
「うちには人に誇れるような強みなんてないよ」そう言っていた園長先生に、私は取材の帰り際心の中で語りかけました。
大丈夫です。この給食室から生まれる物語こそが、どこにも真似できない、あなたの園の最高の価値ですよ、と。
その泥くさい本質を言葉にして、未来の仲間や保護者の方々へ届けていくこと。それが、35年間現場を歩き続けてきた、私の変わらない仕事です。
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FAQ
「なぜカンドウコーポレーションは取材を重視するのですか?」
「社長と社員で会社の魅力が違うのはなぜですか?」
「活躍している社員にはどのような共通点がありますか?」
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール