「採用サイトをつくる」とは、その会社の中にある「誇り」を見つけ出す仕事
久栄建設さんの採用サイトが、昨日公開になりました。
広島県江田島市で、港湾土木を中心に事業を展開されている会社です。
今回の制作にあたっては、6月の企画段階から何度も会社へ伺いました。
社長や社員の皆さんにお話を伺うだけでなく、実際に船に乗せていただき作業現場もこの目で見せていただきました。
久栄建設採用スペシャルサイト (新規ウインドウが開きます)
正直に言えば、最初にお話を伺った時点では、私自身も「港湾土木」という仕事をよく理解していませんでした。
巨大なクレーン船があって、海の上で工事をする・・・知識としてはその程度だったのです。
しかし、いざ真夏の現場へ足を踏み入れ取材を始めると、その甘い認識は一吹きで吹き飛びました。
とにかく、現場は灼熱です。
容赦なく照りつける太陽と、海からの照り返し。船の上は鉄板ですのでとにかく暑い。(^^;;;
揺れる船内でカメラを構え、取材を行うだけでも汗が止まりません。
初日の取材時、あまりの暑さに半袖のまま船に乗り込もうとして、「危ないから長袖を着てください!」と現場の方に叱られてしまいました。(^^;船の上は突起物や機材も多く、怪我を防ぐための大切なルールだったのです。
慌ててお借りした長袖は、なんと分厚いジャンパー。
太陽の下でそれを着込んで撮影を続けていると、あまりの暑さに頭がクラクラとしてくるほどでした。(笑)
さらに、目の前にそびえ立つ400トン級の巨大なクレーン船。
船内は思いのほか広く、あっちへ行き、こっちへ行きと夢中で動き回っているうちに、気づけば足はパンパンになっていました。
たった数時間、取材で同行しただけでヘトヘトになっている私を横目に、現場の社員さんたちは重い機材やロープを軽々と扱い、テキパキと仕事をこなしていきます。
「こんなに過酷な環境で、毎日仕事をされているんですね」
と感心して声をかけると、皆さん「まあ、慣れてるからなんてことないよ」とニカッと笑うのです。
その笑顔を見たとき、胸がギュッと締め付けられるような感動を覚えました。
18歳で入社し、夢中で仕事を覚えている真っ最中の若手。
巨大クレーンを自在に操ることを目標に掲げる若手。
船長として、船と乗組員全員の安全をその肩に背負っている人。
何十年もこの海で仕事を続けてきた大ベテラン。
県外の現場へ行けば、船の中で仲間と寝泊まりすることもあります。朝起きればそこが職場。夏は灼熱、冬は極寒。決して楽な仕事ではありません。
それでも、取材した皆さんから後ろ向きな言葉は驚くほど出てきませんでした。そこに溢れていたのは、紛れもない「誇り」です。
自分の仕事への誇り。乗っている船への誇り。共に働く仲間への誇り。そして、久栄建設で働いていることへの誇り。
これは、綺麗に整えられた会社案内を読んでいるだけでは、絶対に分からなかったリアルでした。
特に印象的だったのは、若い社員さんたちです。最初から港湾土木の世界に強い憧れを持っていた人ばかりではありません。入社するまで、こうした仕事が存在することすら知らなかった人もいます。
それでも船に乗り、先輩の手厚い指導を受けながら仕事を覚え、資格を取り、任される業務を少しずつ増やしていく。
その先には、クレーンオペレーターや船長という大きな目標が待っています。
真夏の船上で彼らの姿を追いかけるうち、私の心の中に強い思いが芽生えました。
「これは、単なる建設会社の採用サイトにしてはいけない」と。
条件や待遇、福利厚生を機械的に並べるだけでは、この会社の本当の魅力は伝わりません。
久栄建設で生き生きと働く「人」そのものを見せる必要があると感じたのです。
だからこそ今回のサイトでは、現場で働く人たちの「生の言葉」をそのまま紡ぎ出すことにこだわりました。
自分を格好よく見せるための飾った言葉ではありません。海の上で汗を流す人が、自分の仕事について語った等身大の言葉です。
写真撮影も同じです。綺麗な会議室で腕を組んでもらうのではなく、できる限り実際の現場で撮影しました。
船の上。操舵室。クレーンのすぐ傍。海を背にした甲板。現場で戦う人は、やっぱりその場所で撮った姿が一番格好いいのです。
長年採用の仕事に携わってきましたが、採用サイトをつくる役割は、一般的な求人広告をつくることとは少し異なると感じています。
会社側が「うちはこんなに良い会社ですよ」とアピールするのではなく、そこで働く人を見せ、仕事を見せ、現場を見せる。
そして良い部分だけではなく、過酷さや大変さといったリアルもしっかりと提示する。
それを見て「自分には厳しそうだな」と去っていくのも、一つの正解です。
逆に、「なんか、この仕事いいな」「この人たちと一緒に働いてみたい」と感じる人が一人でも現れれば、それもまた大きな正解なのです。
採用サイトの価値は、応募の母集団を膨らませることだけではありません。
会社と求職者が互いを深く理解し、「ここなら自分らしく働けそうだ」と思える確かな出会いを生み出すことにこそあります。
今回、久栄建設さんで何度も取材させていただき、灼熱の船に揺られ、社員の方々の生の声を聞く中で私はまた一つ大切なことに気づかされました。
「会社の本当の強みは中にいる人ほど案外気づけないものだ」
ということです。
毎日繰り返す厳しい業務だから当たり前になる。
何十年も技術を継承してきたことも当たり前。
後輩を温かく育てることも、資格取得を全力で支援することも当たり前。
船を大切に手入れし仲間の安全を第一に考えることも、すべて「当たり前」。
しかし一歩外から見れば、その「当たり前」の積み重ねの中にこそ、他には真似できないその会社独自の価値が詰まっています。
今回のプロジェクトは、ホームページを制作したというよりも、久栄建設さんの中に眠っていた「本人たちにとっては当たり前の価値」を発掘し、言葉と写真というカタチに変換していく作業だったと感じています。
だからこそ、私はこの仕事が好きなのだと改めて実感しました。
サイトデザインは、「1を言えば10を知る」デザイナー・小田英男。35年の長きにわたり私の紡いだ言葉をデザインへと昇華させてきた、言葉なき意思疎通ができる表現者です。
フロントエンドの構築は、カンドウコーポレーションのAIサーチ・アーキテクト・山本大志。
技術と感性が融合したこの体制があったからこそ、あの現場の熱量を余すところなくカタチにすることができました。
ぜひ、海の上で誇りを持って働く社員さんたちの表情と、その言葉に触れてみてください。
制作実績 久栄建設株式会社 採用サイト
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール