会社の強みは、一つに決めなくていい|広島の採用ホームページ制作会社の本質論
マーケティングや採用ブランディングの仕事をしていると、必ずと言っていいほど出てくる問いかけが、
「御社の一番の強みは何ですか?」「他社と差別化できる、たった一つの特徴は何ですか?」です。
私自身も35年間、この質問を何度となく経営者や現場の方々に投げかけてきました。
他社との違いを明確にする。選ばれる理由をたった一つの鋭いコンセプトに研ぎ澄まし、短いキャッチコピーに落とし込む。
確かに、それはマーケティングのセオリーであり、大切な手法の一つです。けれど、何百社という現場へ足を運び、何千人もの「働く人」の生の声を聞き続けてきた今、私は少し違うことを考えるようになりました。
会社の強みって、本当にたった一つに絞り込まなければいけないのだろうか・・・。
採用サイトを作るために、ある保育園で何人もの職員さんたちを取材しました。
そこで、10年目の保育士さんが語ってくれたのは、「10年やっても、毎年仕切り直しなんです」という言葉でした。
同じ3歳児を担当しても、去年と今年では目の前の子どもが違う。
過去の成功体験に頼らず、まっさらな気持ちでまた一から考え抜く。そこには、人を相手にするプロとしての揺るぎない覚悟がありました。
別のベテランの先生は、この園で27年間働き続けている理由を教えてくれました。
子育て中に急な発熱で休まなければならなかった頃、先輩たちが「お互い様だから、いいよ」と嫌な顔一つせず背中を押してくれたこと。
そして今、彼女自身が若手を支える側に回り、その温かいバトンが27年間受け継がれていること。
そこには、制度の文字を超えた「生きている組織文化」がありました。
さらに、管理栄養士さんの話も圧倒的でした。
制度上は置く義務がないはずの保育園に、なんと3人も置いていること。
「子ども主体」という園の理念を給食室でも徹底し、無理にお箸の練習をさせるのではなく、手や指の筋肉を楽しく鍛える「塗り絵」からアプローチしていたこと。
そこには、職種を超えて浸透する「理念の凄み」がありました。
さて、ここで考えてみたいのです。
この保育園の「本当の強み」とは、一体何なのでしょうか?
保育士さんの妥協なきプロ意識でしょうか。
27年間受け継がれてきた「お互い様」の温かい人間関係でしょうか。
科学的なデータまで取る本気の食育でしょうか。
それとも、全職員に染み渡る「子ども主体」という保育方針でしょうか。
私は、どれか「たった一つ」を選ぶ必要なんて、最初からどこにもないと思うのです。
むしろ、そのすべてが重なり合った集合体こそが、この園の真の強みではないでしょうか。
会社や組織というものは、たった一つの特徴や記号だけでできているわけではありません。
そこで泥臭く働く人がいて、大切にされてきた考え方があって、長い年月をかけて育まれた文化があり、日々の現場での工夫がある。それらが複雑に、けれど美しく絡み合って、初めて「その会社らしさ」という唯一無二の価値になります。
なのに私たちは、マーケティングやWeb制作を考え始めた途端、急に頭を硬くして「一言で言うと何?」「差別化ポイントを1つに絞って」と、手っ取り早くまとめようとしてしまいます。
もちろん、伝えるために情報を整理することは必要です。何を一番大きく打ち出すかを文脈によって決めることもプロの仕事でしょう。
けれど、「整理すること」と「大切な価値を削り落とすこと」は、全く違います。
私は、そこを絶対に履き違えたくありません。
「うちの強みは圧倒的な技術力です」そうたった一つの言葉に決め打った瞬間、現場で生きている職人たちの人柄や、後輩を育てる温かい風土といった他の貴重な価値が見えなくなってしまうことがあります。
「アットホームで働きやすい会社です」そう簡潔に括った瞬間、その会社で20年、30年かけて大切に受け継がれてきた泥くさい信頼関係が、どこにでもある薄っぺらな言葉へと成り下がってしまいます。
強みとは、綺麗なキャッチコピーをつくって看板に掲げるためだけに存在するものではありません。その会社の中に脈々と息づいている、たくさんの「選ばれる理由」そのものなのです。
今回、一つの保育園の現場へ足を運んだだけで、私は全く異なる、けれどどれも本物である3つの素晴らしい物語に出会いました。
どれか一つが正解で、他が不正解なのではありません。どれもが紛れもない「その園の真実」です。
だから私は、会社の強みを無理やり一つに絞り込まなくてもいいと思っています。
大切なのは、価値を1つに減らすことではなく、「それぞれの価値が、誰の心に深く刺さるのか」を丁寧に考えることです。
未来の仲間(求職者)に伝えたい価値。地域や保護者、お客様に伝えたい価値。そして、毎日現場で頑張っている社員自身に「うちの会社って良いな」ともう一度誇りを感じてもらうための価値。
届ける相手が変われば、差し出すべき言葉が変わるのも当たり前です。
「一つの会社に、一つの強み」・・・そんなに会社という存在は、単純でも、浅くもありません。
35年間、泥くさい現場へ足を運び、人の温もりや職人の誇りに触れ続けてきた私だからこそ胸を張って言えます。
会社の中にいくつもの強みがあって、いくつもの物語があっていい。それらを削ぎ落とすことなく、届くべき人へと届く「伝わる言葉」に変えていく=言語化すること。
それこそが、35年この道を歩み続けてきた私の仕事なのだと思っています。
10年やっても、毎年一年生になる仕事|広島の採用ホームページ制作会社が紐解く人材獲得の本質
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール