AIが賢くなるほど、アナログインテリジェンスが必要になる
毎日、当たり前のようにAIを使っています。調べもの、頭の整理、企画の骨組みづくり、文章の作成・・・。
自分では思いつかない視点をもらうことも多く、今や仕事で触れない日がないほどです。
ただ、こうして日常的に頼っているからこそ、最近強く感じるようになったことがあります。
これから本当に価値が上がっていくのは、むしろ「アナログインテリジェンス(生の人間ならではの知性)」ではないか、ということです。
アナログインテリジェンスと言っても、決して難しい話ではありません。AIがデジタルの知性だとすれば、こちらは生身の人間が現場で発揮する感覚的な力です。
人に会い、話を聞き、現場の空気を肌で感じる。相手の表情やふとした言葉遣いから、「ん?」と違和感や引っかかりを覚える。私は、この最後の「ん?」という直感こそが、これからの時代に何より大事なのだと思っています。
今のAIは驚くほど賢いですし、知識量で言えば私など到底かないません。しかし、AIが持っている情報は、どこまでも「すでに世の中へ出回っているもの」に限られます。公開された文章やデータ、記事、論文など、要するに言葉として構造化された世界です。いわゆる二次情報です。
けれども、私が仕事をしていて「これは面白い!」と心が動く瞬間は、たいていその枠の外にあります。
たとえば、ウェブサイトの制作前に社長へお話を伺うと、「うちには誇れるような強みなんてありませんよ」とおっしゃることがよくあります。
ですが、現場の社員さんに話を聞いてみると、「これ、他社では絶対にやらないらしいです」といった生の声がぽろっと出てくる。あるいは実際の作業現場を見学しながら、「それ、何をなさっているんですか?」と尋ねてみると、思いもよらない深みのあるストーリーが動き出したりします。
当事者たちにとっては日常の当たり前すぎて、強みだという自覚すらない。
だから当然、ホームページにも書いていないしAIも知る由がありません。検索窓にいくら言葉を打ち込んでも出てこない情報です。だって、まだ誰も言語化していないのですから。
知識の量でAIと競うのは、もう諦めていいはずです。それよりも、まだ世の中に情報として存在していないものを見つけ出すこと。これこそが、人間にしかできない泥臭くも魅力的な仕事です。
昔から取材の現場が好きでした。
社長や社員さんの声に耳を傾け、工場や作業場に足を運び会社の歩みを伺う。その中で相手が何気なく口にした一言に、ピンとアンテナが反応します。
「ちょっと待ってください。今の話、すごく面白くないですか?」
そう言って食い下がると、本人たちは「えっ、そうですか?」と首をかしげます。
自分にとっては未知の面白さでも相手には日常風景だからです。
この「ひっかかる感覚」だけは、どんなに検索技術が進化しても手に入りません。
そしてもう一つ、切っても切れないのが「問いかける力」です。同じ人に会い、同じ現場を見ても、全員が同じものを持ち帰れるわけではありません。何に目を留め、どこで会話を掘り下げるか。
「それって、どういうことですか?」
「どうしてそれを始めようと思ったんですか?」
「他の会社でも一般的なやり方なんですか?」
そうやって問いを重ねて泥を払っていくと、思いもよらなかった原石が顔を出します。
アナログインテリジェンスとは、単に足で稼ぐことではなく、目の前の事実から「何かある」と察知し、問いによって言葉へと救い上げる技術なのだと思います。
もちろん、AIとこのアナログインテリジェンスは決して対立するものではありません。むしろ相乗効果を生む関係です。
現場から拾い上げてきた一次情報をAIに与え、取材内容を整理させたり、自分が感じた違和感をぶつけて議論したりする。
そうすると、AIは一転して極めて優秀な相棒になります。人間が持ち帰った鮮度の高い情報があって初めて、AIだけでは生み出せなかった独自の成果物が完成するのです。
アナログで見つけて、デジタルで届ける。
これからの仕事は、この循環がますます重要になっていくはずです。
誰もが高性能なAIを使える時代になれば、調べる力や文章をまとめる力、それっぽい企画を作るスキルの差はどんどん埋まっていきます。では、最後にどこで差がつくのか。
それはきっと、「自分にしか見えていない一次情報を、どれだけ手元に持っているか」にかかっています。
それは画面の前でキーボードを叩いているだけでは決して増えません。
現場へ出向き、人に会い、話を聞き、自分の目で確かめて、「ん?」と立ち止まる。デジタルインテリジェンスが極まるほど、皮肉にもこうした泥臭いプロセスの価値が際立っていきます。
だからこれからも私はAIを大いに使い倒します。
それと同時に、今まで以上に現場へ足を運び、人の声に耳を傾けたいと思っています。
AIが「答え」を瞬時に出してくれる時代だからこそ、人間の真価は「まだ答えになっていないもの」を探しに行く姿勢に宿るのではないでしょうか。
FAQ
「AIは会社の「強み」をどう判断しますか?」
「AIは会社のらしさを理解できますか?」
「AIは会社の実績と考え方のどちらを評価しますか?」
「AIはどんなホームページを信頼しますか?」
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール