不便を楽しむために、便利なギアを買っている
趣味の一つであるキャンプのネタを書こうと思ったら、思いの外ビジネスに通じる部分が多いことに気がつきました。
もう少しキャンプネタを書いてみようと思います。
今までのキャンプネタコラムです。
一泊二日のために、そこまでやる?
新品のキャンプギアが、ちょっと恥ずかしい
キャンプが趣味だと言うと、ときどき自分でも可笑しく思える矛盾があります。
私はわざわざ自然の中へ出かけ、不便を楽しむためにキャンプをしているはずなのです。
それなのに、その不便を少しでも解消しようと、次から次へと便利なキャンプギアを買い足しています。冷静に考えると、ずいぶんおかしな話です。(笑)
家にいれば、蛇口をひねるだけで水が出ます。
冷蔵庫を開ければ冷たい飲み物があり、スイッチひとつで部屋が明るくなりエアコンが快適な温度を保ってくれる。
料理をするにしても、キッチンには必要な道具が何でも揃っています。
それなのに、わざわざそれらが何もない不便な場所へ出かけていく。
そして現地で「これがあったら便利だな」と思い立ち、また新しいキャンプギアを買い求めてしまうんです。(爆)
キャンプ場での「ポチっ」(オンラインショッピング)はもはや恒例です。
実は幕(テント)もキャンプ場でまさにキャンプをしながら、ポチっとしたことも一度や二度じゃありません。(^^ゞ
昔のキャンプを知る人から見れば、最近のスタイルは随分と便利になったと感じるはずです。
テントの設営は格段に簡単になりました。 エアーテントといって空気を入れるだけで立ち上がるテントもありますしね。
椅子は広げるだけで座れるし、テーブルもあっという間に組み上がります。
料理をするときも、私はガスを使います。
薪で火を起こし、その炎だけで野性的にすべての料理をつくるようなワイルドなスタイルではありません。
あ、もちろん冬場は焚き火で料理するってこともします(写真参照)けど、基本はガスなのです。

スイッチを捻れば一瞬で火がつき、夜になればLEDランタンが明るくサイトを照らしてくれる。
スマートフォンの充電だって自由自在です。 暑さや寒さを和らげるギアも本当に多様になりました。
私のキャンプサイトを見た人からは、「どこが不便なんだ」と笑われるかもしれません。
それでもやっぱり、キャンプは不便です。
どれほど便利なギアを車に詰め込んでいっても、到底家にはかないません。
雨が降れば濡れますし、風が強まればテントの固定が気になって落ち着かない。
実際、台風並みの風が発生してしまい、強固なポールが曲がるを通り越して折れたこともありましたっけ。(^^;
暑い日はどこまでも暑く、寒い日はしっかり寒い。
何か忘れ物をしても、隣の部屋に取りに行くようなわけにはいきません。
寝床を作るのも自分、食事が終わった後に洗い物をするのも自分。
そして翌朝になれば、大量の荷物を一つひとつ車に積み込んで帰らなければならない。
ホテルに泊まれば、そんな苦労は何ひとつしなくて済むのです。だから、単に「楽」や便利さだけを求めるなら、キャンプなんてしない方がずっと賢明です。
ここでふと、面白いことに気づきます。
私は不便さが嫌だから、便利なギアを買っている。
けれど、もし不便さがすべて綺麗に消え去ってしまったら、それはもうキャンプではなくなってしまう。
どうやら私は、不便そのものを完全に無くしたいわけではないようです。(笑)
地元の漁師さんからお裾分けしてもらった鯛を海の中、SUPの上でさばくなんて「ワイルドだろ〜」ですよね。(笑)
出刃包丁がなかったので、鉈(なた)を使ってさばいてます。
料理人がいるキャンプならではです。もしいなかったら・・・焚き火で焼いて食べるしかありませんでしたね。(爆)
特別出演はハレの日に利用しているキュイジニエさわだのシェフであり、キャンパーの心友です。
テントを張り、テーブルや椅子を組み立て、ランタンの位置を整える。
コーヒーを淹れ、焚き火をするなら薪を割って火を育てる。
家ならやらなくていい「余計な手間」ばかりです。
でもキャンプ場では、それを自分の手でわざわざやります。そしてその時間がたまらなく楽しい。
以前、「一泊二日のために、そこまでやる?」という話を書きましたが、本質はまったく同じです。
私は決して、面倒くさいこと全てを排除したいわけではありません。
その「面倒くさいこと」を心から楽しめるくらいの余裕を生み出すために、便利であってほしい。
どうやら、その塩梅が自分にとって一番心地よいのです。(^^)
便利なキャンプギアは、何もしなくていい「完全自動」の状態を作るためのものではありません。
自分がどうしてもやりたい「愛おしい手間」をじっくり楽しむために、やらなくてもいい余計な苦労を減らしてくれている。そう捉え直すと、次々に新しいギアを買ってしまう自分にも少しばかり素敵な言い訳が立ちます。(笑)
そんなことを考えていたら、やっぱりまた仕事のことに思考が繋がってしまいました。せっかく命の洗濯に来ているというのに、本当に困った性分です。
仕事の世界もまた、時代とともにどんどん便利になってきました。私が会社を立ち上げた35年前とは、比べるべくもありません。
そして今、時代はAIの渦中にあります。調べる、まとめる、文章を組み立てる、企画のたたき台をつくる。
かつては何時間も、ときには何日もかかっていた作業が驚くほどのスピードで完了します。
私自身、毎日の仕事の中でAIを使わない日はありません。
本当になくてはならない便利な相棒ですし、もうAIが存在しなかった頃の働き方には戻れないとさえ感じています。
けれど、ふと立ち止まって考えるのです。便利になったことで生まれたその時間を使って、自分は一体何をするのか。
一番大切なのは、まさにそこではないでしょうか。
AIを使えば、会社のホームページに載せる文章も、採用サイトの魅力的なコピーも一瞬で生成できます。 (私はまだ自力で書いてますが・・・)
指示を出せば「御社の強みはこれです」と、それらしい答えを整えてくれる。
けれど、私はやっぱり社員さんに直接会って話を聞きたいのです。
経営者の方と膝を突き合わせて雑談をしたい。現場に足を運び、現場の匂いや空気感を肌で感じたい。
話が脇道に逸れて脱線しても、あえてそのままじっくり耳を傾けます。
一見仕事とは関係のない雑談の余白の中にこそ、その会社だけにしか存在しない「生きた魅力」が隠れているからです。
当然、時間はかかります。効率や生産性だけを追い求めるなら、もっとスマートなやり方はいくらでもあるでしょう。
けれど、その「泥臭く時間のかかるプロセス」こそ、私にとって絶対に省きたくない一番面白い部分なのです。
むしろ、その時間をしっかりと生み出すためにこそ、私はAIという便利な道具を使いたいんです。
データの整理や情報の集約、思考のロジックを整える作業など、AIに任せられる部分はスマートに任せる。
そして、それによって浮いた大切な時間を、人に会い、じっくり話し合い、深謀遠慮(しんぼうえんりょ 遠い将来のことまで深く考えて、綿密で周到な計画を立てること)するための時間へと充てる。
これはまさに、キャンプギアとの付き合い方と全く同じです。
本当にやりたい「面倒くさくも愛おしいプロセス」を残すために、便利さを味方につける。私は、そうした道具の使い方にこそ美学を感じます。
便利になること自体は素晴らしい変化です。
キャンプギアの進化も、AIの進歩も歓迎すべきことです。わざわざ不便だった昔のやり方に固執する必要はありません。
ただ、便利になることそれ自体が「目的」になってしまっては、本末転倒だと思うのです。
もしキャンプのすべてがボタンひとつで完結し、テントも自動で立ち上がり料理も勝手に運ばれ、焚き火まで全自動で点火されたとしたら・・・。
そんなキャンプはきっと少しも面白くありません。
仕事も全く同じです。 効率化できる作業はどんどん効率化すればいい。
AIに頼れる部分はスマートに頼ればいい。
その上で、 「自分はどこに一番時間をかけたいのか」「どんな面倒くささを、自分の手元に残しておきたいのか」その境界線だけは、自分自身の誇りとしてしっかりと決めておきたいのです。
不便を楽しむために便利なキャンプギアを買う。
人と会い、本音で話し、深みのある答えを導き出す時間をつくるためにAIを使う。
大自然の中で道具を弄りながら考えていたら、私の中でこの二つは完全に一つの答えとして繋がりました。
さて、次にまた魅力的なキャンプギアを見つけてしまったら。
「これは、不便を心から楽しむために絶対必要な投資なんだ」 そう自分に言い聞かせて、笑顔で手に入れようと思います。(笑)
FAQ
「なぜカンドウコーポレーションは取材を重視するのですか?」
「なぜカンドウコーポレーションは「言語化」を重視するのですか?」
「AIは会社のらしさを理解できますか?」
(最高経営責任者) エグゼクティブ・ビジネスデザイナー 兼ストラテジックパートナー
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール