採用サイトをつくる前に、会社の中にあるものを探す
久栄建設さんの採用サイトが公開になったのは前述の通り。
「採用サイトをつくる」とは、その会社の中にある「誇り」を見つけ出す仕事
今回のプロジェクトを振り返ってみると、私たちは最初から「どんな採用サイトをつくろうか」とデザインや表現のアイデアを練っていたわけではありませんでした。
なぜなら、その前に知らなければならないことが山ほどあったからです。
そもそも港湾土木とはどんな仕事なのか。
巨大なクレーン船の上では、日々何が行われているのか。
船の上で働くとは、具体的にどういうことなのか。
県外の現場へ出張したときの暮らしは、どんなものなのか。
どんな人たちが集まり、どうやって仕事を覚え、何年かけて一人前になっていくのか。
つくる側である私たち自身が深く理解できていなければ、求職者の方々に届く言葉など書けるはずがありません。
だからこそ、まずは徹底的に「聴く」ことから始めました。
Active listening、お得意の積極的傾聴です。(^^)
社長に聴き、船長に聴き、現場監督に聴き、若手社員の皆さんにも丁寧に耳を傾けました。そして実際に現場へ足を運び、船に乗せていただきました。
そうやって一つひとつ言葉を拾い上げていくうちに、求人票の文字だけでは絶対に分からない「久栄建設という会社の本当の姿」が、少しずつ浮かび上がってきたのです。
例えば、今回のサイトには「未経験入社率ほぼ100%」という数字を大きく掲げています。
これだけを見ると、よくある「未経験者歓迎!」という採用の定型句に見えるかもしれません。
しかし取材を進めると、その意味の重みはまったく違っていました。
港湾土木、ましてやクレーン船での作業を経験して入社してくる人など、そもそも滅多にいません。
つまり久栄建設さんにとって、「未経験者を迎え入れ、一から教え、資格を取らせ、時間をかけて育てること」は、アピールするための特別な制度などではなく、何十年も当たり前に続けてきた「日常の営み」そのものだったのです。
一人前になるまで、早い人でも2~3年。一般的には5年ほどかかります。
資格を取ればすぐに一人前になれるわけではなく、海の状況を読み、船の揺れや動きを知り、周囲と息を合わせながら作業できるようになって、初めて一人前への足がかりができる。
こうした現場のリアリティも、じっくりとお話を伺わなければ見えてこない事実でした。
採用サイトを制作していると、こうした「会社にとっては当たり前すぎる出来事」によく出会います。
会社の方々は決まってこうおっしゃいます。
「そんなこと、どの会社でもやっていることでしょう?」と。
しかし、外から客観的に見る私たちからすれば、「いいえ、それこそが求職者が一番知りたい誇るべき価値ですよ」とお伝えしたいことが山ほどあるのです。
久栄建設さんには、18歳で入社したばかりの若手がいます。
一方で、入社34年目を迎える大ベテランの船長もいます。御年74歳になる船長さんもいらっしゃるそうです。
クレーンオペレーターを目指して汗を流す若者がいて、実際に巨大なクレーンを自在に操る先輩がいて、船全体の安全を預かる船長がいる。
彼らの言葉を並べていくと、それだけで一筋の美しい「キャリアの軌跡」が見えてきました。
だからこそ今回のサイトでは、会社側が頭で考えた理想のモデルケースではなく、現場のリアルな歩みから見えてきた道筋をそのまま「キャリアステップ」としてページにまとめました。
船上生活のコンテンツも同様です。港湾土木の仕事を知らない人からすれば、「船の上で寝泊まりすることがあります」と聞くだけで、大きな不安を感じるのが普通です。
だったら、絶対に隠さない。
実際に寝起きする居室も見せる。
お風呂も見せる。
みんなが集まる食堂も見せる。
仕事が終わったあと、仲間と談笑する時間も、一人になってリラックスできる時間も、包み隠さずすべてを伝える。
綺麗に飾って良く見せることよりも、分からない不安を一つひとつ解消していくこと。
これこそが、採用サイトにおいて最も大切な姿勢だと私は考えています。
入口の設計(エントリー導線)についても、同じ思想で組み立てました。
いきなり「ご応募はこちら」と迫るのではなく、「まずは気楽に、仕事を見に来ませんか?」という呼びかけにしています。
履歴書もいりません。面接でもありません。
これはデザイナーである小田からの提案でした。
私の意図を汲み取り、デザインカンプの段階で勝手に(笑)入れてきていたのです。
「これ、いいじゃん。最高っ!」
そう伝え、あとは社長の許可を取るだけでした。
港湾土木という馴染みのない仕事に対して、いきなり人生の重大な決断を求めること自体に無理があります。
まずは現場を見てもらう。話を聞いてもらう。その上で「自分にもできそうだな」と思えたら、次のステップへ進めばいい。
逆に、実際に見て「自分には合わないかもしれない」と感じたなら、ミスマッチを防げたという意味でそれもまた成功した採用活動なのです。
そこをデザイナーの立場から「まずは気楽に、仕事を見に来ませんか?」と絵にしてくれたわけです。
採用サイトの制作というと、どうしても「どう魅せるか」というデザインや表現技法の話になりがちです。
洗練されたデザインにする。美しい写真を撮る。心に刺さるキャッチコピーを書く。もちろん、それらもプロとしての重要な仕事です。
しかし、その手前に絶対に省略してはならない工程があります。
それは、「その会社の中にすでにある宝物(価値)を探し出すこと」です。
社長が「当たり前」だと思っていること。
社員の皆さんが「普通」だと感じていること。
何十年も続いてきたからこそ、誰も疑問にすら思わなくなった文化。
そこにこそ、その会社が求職者から選ばれる本当の理由が隠されています。
それを見つけ出し、言葉にし、写真に収め、まだ見ぬ誰かに届く形へと翻訳する。私たちが手掛けているのは、そういう採用サイトづくりです。
今回の久栄建設さんの採用サイトにも、特別に作り込んだフィクション(嘘)は一つもありません。
そこにいた人たちの熱量。現場で行われていた誇りある仕事。代々受け継がれてきた人を育てる風土。船上でのリアルな暮らし。そこで育まれた確かな人間関係。
すべて、もともと久栄建設さんの中に脈々と存在していたものです。私たちはそれを丹念に掘り起こし、並べ、言葉として揃えたに過ぎません。
しかし、そうやって一つひとつの要素を丁寧に「揃えて」いくことで、「久栄建設とはこういう会社なのだ」という揺るぎない輪郭が、くっきりと立ち現れてくるのです。
採用サイトをつくる仕事とは、会社を実物以上に良く見せる仕事ではありません。
その会社がすでに持っている「本当の価値」を見つけ出し、まだ出会っていない未来の仲間へまっすぐに届ける仕事なのだと改めて感じています。
今回のサイトには、私たちが取材を通して見つけた久栄建設さんの魅力を、余すことなく詰め込みました。
社員インタビューはもちろん、具体的な仕事内容や船上生活のリアル、キャリアステップ、そしてFAQに至るまで、ぜひじっくりと覗いてみてください。
海の上で働くということのリアルと、そこで輝く人々の格好よさがきっと伝わってくるはずです。
FAQ
「AIは会社の「強み」をどう判断しますか?」
「AIは会社のらしさを理解できますか?」
「AIはどんなホームページを信頼しますか?」
1961年生まれ。広島県広島市出身。広島修道大学中退後、リクルート、カーディーラーの採用・教育担当を経て、企業内の体質改善・採用・教育コンサルタント会社として、1991年2月有限会社オフィスCAN(現 株式会社カンドウコーポレーション)を設立。その後思い切った業態転換により、クリエイティブファームとしてのポジションを確立する。
福原 勘二のプロフィール