2011年5月26日(木)11:20
行かなくなったレストラン
ボクは飽き性に見られがちですが、「ここ」と決めるとお店はなかなか浮気しません。(笑)
確かにそうしょっちゅうは行けない(お高いので)お店もありますが、広島で鮨を食べるならば鮨昇、東京で食べるならば鮨通、天ぷらは天甲で・・・とかもう完全に決めているワケです。
お店が続く限りそのお店に通い続けますが、「何か」の変化による気持ちの擦れ違い、ボクが大好きだった部分の変化、等々で、ピタっと行かなくなるお店もあります。
「何を食べるか」よりも「誰と食べるか」に重きを置く(このスタンスは今も変わりません)ので、空間、接客、音楽、匂い、照明・・・色んなものが交差してお店が作り出す世界観が自分に合っていたら最高だと思っています。
そんな粋なレストランは広島にもちゃんとあったんです。
いや、今でもきっと粋さは携えていると思いますけど。
サービスマンが奏でる接客サービスが大好きで、随分と通ったものです。
半端じゃないお金も落としていたと思いますよ。
パーティーとかでも使っていましたし、何人お客様をご紹介したことか。
なのに、ある日を境にパタっと行かなくなってしまったのです。
贔屓にしていた料理人が交代するタイミングと重なったから、料理が合わなかったのね~くらいに思われているかもしれませんね。
でも全然違うんです。
「何を食べるかよりも誰と食べるかだ!」と言い続けているくらいですから、料理人はボク的にはサブの場合もあるくらいです。(笑)
彼は一流のサービスマンでしたし、粋さもあり、ノリもあり、それでいて知識でもボクらを愉しませてくれていました。今でも今まで出逢った中で最高のサービスマンだとさえ思ってます。
彼はオーナーでもありましたから、レストランの方向性を考える立場でもあります。
元々お客様との絶妙な距離感で、3つの差別化軸で言うところの「密着軸」でした。
商品力ありきの「商品軸」でもなく、早くて安い、そしてそこそこ旨い「手軽軸」でもありません。
もちろん重きをこのどちらかに置いて、それ以外に足を置くこともあります。
カンドウは密着軸に軸足を置き、商品軸にも軸足以外の足を置いていますし。
そのレストランもカンドウと全く同じスタイルだと思っていましたし、今もそうだと思います。
軸足は絶対にブレたらダメなんですよね。一貫性がなくなっちゃう。
ボクが行かなくなってしまった理由はちっちゃなことなのですが、そのちっちゃなことに全てが見えてしまったというのが実情です。
牡蠣が食べたいからということで広島に来られた大切なゲスト。牡蠣尽くしをフレンチでお願いするのもどうかと思ったのですが、他の店じゃワインがいいマリアージュができない。それで超が付くほど通っていたレストランにお連れしたのですが、全然牡蠣尽くしじゃなかったんですよ。(^^;
最初の二品だけ。後は自店は商品軸にシフトするんだと言わんばかりのフレンチの料理。
美味しかったんですよ。確かにいい腕していたと思います。でもここは密着軸を発揮してお客様のカスタムメイドに応えてほしかったんですよね。そもそもそれが好きで通い詰めていたお店でしたから。
とっても残念でしたし、一貫性のブレを感じてしまって行かなくなりました。ま、ボクも依怙地ですし、プライベートの利用だったらまだ良かったのですが、とっても大切なゲストをお連れしていただけに、その残念さ、そしてゲストに対しての申し訳なさは筆舌尽くしがたきものでした。
商品軸(今回の場合は超高級フレンチ)に軸足を置くんだったら、もっと豪華で内装からステータスまでが一流というフレンチに行きます。闘う場所は「高級フレンチ」市場ですね。そっちは料金もそれなりに高いですが、それが分かってるのでワインのバカ飲みはしませんし。(笑)
密着軸だからワインも好みに合わせたワインをセレクトしてくれていたのに、ちょっと気を抜いてワインを頼み過ぎたら「あら、ビックリ!」というくらい高かったですしね。なんか中途半端に感じました。接客スタイルはどうやっても密着軸から逃れられない彼なのに。(^^;
差別化軸の一貫性のブレは今まで「そこが好きだったのに」というお客様の支持を得られなくなります。もちろん、今回オーナーはそれを狙ったのかもしれませんが、それはボクに「来なくて結構です」と言われたようなものに感じました。もちろんそんなのは全く意図してなかったと思いますけどね。
そこからグングン伸びて行って「広島じゃ予約を取るのも難しい」と言われるくらいになったのでしたらボクの戦略・戦術論も大したことないな~で良かったのですが、今はレストランから撤退をしてワインバーになっています。シェフは辞めましたので商品軸から密着軸へとまた舵を切ったのでしょうか。
ゲストが「あ、オレってカッコイイ?」と勘違いする(させてくれる)数少ないお店だっただけに、とっても残念ですね。(^^;
今でもあの店の空間感や心地よさは他の店ではないモノだと思っています。
それ自体はオーナーが狙ったものだと思いますし、大したものだと思います。
それだけに・・・本当は淋しいんですけどね。(ToT)
だからこれを書いてるというか。
彼以上のサービスマンとは今後出逢えないだろうな~。